中国医学の理論は、古代中国の自然哲学が基礎になり、陰陽五行説にはじまるといわ
れています。
自然界の一切の事物、人体の生理、病理に対する認識、さらに病気の診断、治療に関
する理解等、あらゆる分野の内容が、陰陽五行説で説明されます。
1)陰陽
例えば、天は陽、地は陰。
昼は陽で夜は陰。
陰陽は相対的に調和されていてこそ(バランスを保つ)生理状態が維持で
きるのであり、調和が失われる(バランスが崩れる)と、病気が発生する
原因となると考えられていました。
*陰陽比較表
| 陽 |
男 |
太陽 |
昼 |
夏 |
南 |
気 |
背 |
腑 |
| 陰 |
女 |
月 |
夜 |
冬 |
北 |
血 |
腹 |
臓 |
2)五行説
古代中国人は、木、火、土、金、水(もく、か、ど、ごん、すい)という
五つの要素を選んで五行と称しました。
そして、この五つの要素で事物間の相互の現象を説明しようとしました。
五行の相生関係とは、「木が燃えれば火を生じ、火が尽きれば灰、つまり
土を生じ、土の中からは金属を生じ、金属の表面には水を生じ、水は木を
成長させる」ということです。
五行の相剋関係とは、「木は土の中より育ち、土は水を吸収し、水は火を
消し、火は金属を溶かし、金は木を砕く」という意味があります。
そして、五行の相生の中には相剋が含まれていますし、相剋の中には相生
が含まれています。
相生だけで相剋がなければ平衡が保てず、相剋があって相生がなければ万
物は変化できない−といったように、五行説は人間と何らかの関係がある
現象と物質を木、火、土、金、水の五つの要素に分類して、その相互間系
を説明しているわけです。
*五行相生関係の図 *五行相剋関係の図

例えば、表のように五臓は配されています。
「怒り過ぐれば肝を傷り、喜び過ぐれば心を傷り、思い過ぐれば脾(胃
腸)を傷り、悲しみ過ぐれば肺を傷り、驚き過ぐれば腎を傷る。」(病
症)
これは東洋医学の五行理論に基づくもので、五つの臓器(肝、心、脾、
肺、腎)の診断、予防、治療法をうまく表現しています。
また、逆の見方もできます。
つまり、下の様に・・・
・肝が悪いと怒りっぽくなる
・心臓が悪いと良く笑うタイプの人が多くみられる
・脾(胃腸)の弱い人は常に沈み込んだり考え過ぎて思い患いしやすい
・肺の悪い人は悲しみに沈みやすい
・腎の悪い人は諸事に恐れおののく−。
*五行の色体表
| 味 |
傷み易い場所 |
声 |
香 |
病症 |
五労 |
刺激 |
色 |
方位 |
季節 |
自然 |
五臓 |
| 酸 |
筋 |
呼 |
そう |
怒 |
筋 |
風 |
青 |
東 |
春 |
木 |
肝 |
| 苦 |
脈 |
笑 |
焦 |
喜 |
血 |
暑 |
赤 |
南 |
夏 |
火 |
心 |
| 甘 |
肉 |
歌 |
香 |
思 |
肉 |
湿 |
黄 |
中央 |
土用 |
土 |
脾 |
| 辛 |
皮毛 |
哭 |
腥 |
憂 |
気 |
燥 |
白 |
西 |
秋 |
金 |
肺 |
| 齒+成 |
骨 |
呻 |
腐 |
恐 |
骨 |
寒 |
黒 |
北 |
冬 |
水 |
腎 |
3)五臓と五色
五色とは、青、黄、赤、白、黒の五つの色を指し、先の五臓の病変は
この五色の変化をともなって現れるという考えがあります。
・肝の病は青く
・心の病は赤く
・脾の病は黄色く
・肺の病は白く
・腎の病は黒く
それぞれの色で皮膚に、特に眼瞼に変化が現れるというものです。
これらの五色は当然、はっきりとした色調を伴うものではありませ
んが、健康人、あるいは健康な状態の時に比べて相対的な色変が見
られるという意味です。
例えば、高血圧の人の赤ら顔、肺を患っている人の白い肌など、現
在でも一般的に知られているようなものもあります。
4)五臓と五味
酸(すっぱい)、苦(にがい)、甘(あまい)、辛(からい)、鹹(
塩からい)の五つの味を五味といい、前述してきたこととおなじよう
に、五臓とそれぞれ深い関係があります。病気があれば味覚も変わり
、また、味覚によって食べ物の好き嫌いもわかることから、問診の一
つの手段として重視されました。「素問」に、−肝その味は酸なり、
心その味は苦なり、脾その味は甘なり、肺その味は辛なり、腎その味
は鹹なり−とあります。
・これは、酸っぱいものが好きであれば肝を悪くし。
・苦いものが好きであれば心を悪くし。
・甘いものが好きであれば脾(胃)を悪くし。
・辛いものが好きであれば肺を悪くし。
・塩からいものが好きであれば腎を悪くする。
ということです。
また、過食すると・・・
・肝では筋(スジ)が疲れ、舌がもつれる。
・心では体毛が抜ける。
・脾では髪が抜ける。
・肺では爪が枯れる。
・腎では顔色が悪くなる。
というそれぞれの対応も意味して
います。したがって、好きであれば過食の傾向にあるので、偏食を避
け、食事内容の調和を保つことの大切さを同時に教えているわけです。
5)五臓と五悪
これも五行説の一つで、五臓に対して気象が影響を及ぼすことをあら
わしたものです。−心は暑を悪み、肺は寒を悪み、肝は風を悪み、脾
は湿を悪み、腎は燥を悪む− とあります。
つまり、心の人は暑さを嫌い、また暑さに弱い。
・肺の人は寒さを嫌い、寒さに弱い。
・肝の人は風にあたるのを嫌い、風に弱い。
・脾の人は湿気を嫌い、湿気に弱い。
・腎の人は乾燥を嫌い、乾燥に弱い。
とそれぞれの対応を意味するわけです。
この五臓と五悪の関係は、例えば普段より、あるいは他人より寒気が
ひどくこたえるとき、まず、肺の病かどうかを考えるべきであり、さ
らに、肺病のときには寒気をできるだけ避けなければならないことを
同時に教えています。
いずれにせよ、健康を保持するためには、気候の変化に順応すべきで
あり、逆らえば風、寒、暑、湿、燥が五臓に悪影響を及ぼし、病変の
原因となるということです。