西洋中世史入門書

 西洋中世史に興味があるのですが、どんな本を読んだらいいでしょうという質問を何度か受けました。
 今回は、値段や目的に合わせて何冊かご紹介したいと思います。

 まず、千円以下の文庫や新書です。
 中公文庫の『世界の歴史3』が中世ヨーロッパを扱っています。1974年が初版の本ですが中世史という今からみたらとても古い時代の特性で十年、二十年位では通史の流れはさほど変わりません。内容は西ローマ帝国がゲルマン民族に征服されるところからカール大帝、十字軍、叙任権闘争と書かれ、百年戦争と十五世紀のトピックが語られて終わるというとても欲張りなものです。これ一冊を読み通すことができればその後に読む本に出てくるほとんどの人物に親しみを持つことができるでしょう。
 新書は『ブルゴーニュ家』『修道院』などほとんど各論のため興味のある分野をどんどん読んでみてください。

 次にハードカバーです。
 中世史概説で一番おすすめだと思うのは『ヨーロッパ中世史』(キーン著・芸立出版・\2800-)です。三省堂やジュンク堂など大型書店なら入手可能です。この本のいいところはとても読みやすい文章ということです。訳者の橋本八男氏が言葉使いにとてもこだわったとみえ、翻訳物につきものの不明瞭な点がありません。また史料の引用もあり説得力もあります。

 また旧『岩波講座世界歴史11』もおすすめです。古本屋で買えば五百円位で買えるでしょう。こちらは中公文庫をより専門的に各国別にも視野を向けたもので、ほとんど通史レベルで書いてあり、ある程度名前に慣れてきたならばこちらにも目を通すとよいです。新『岩波講座世界歴史』は各論に入りすぎて論文の寄せ集めのようになっている部分があり、いきなり取り組むには敷居が高いです。

 中世史を知る、というより歴史を知るとには概説もよいのですが、人物史もよいと思います。とはいえ、人物史といっても偉人伝として書かれたものは歴史を知るという点では、あんたはえらいという現代的視点が害になります。できるだけ一生懸命生活していたような人、日々のことに関心を持っていたような人を知った方が、その時代の作法のようなものが見えてくるでしょう。
 そこでおすすめしたいのが『中世に生きる人々』(パウア著・UP選書・\1800-)です。大学によっては教科書に指定されていることもあるという有名な本なのですが、手紙や記録から六人の人物を浮かびあがらせたもので、中世の人が何にびっくりするのか、何に関心があったのかといったことを教えてくれます。
 この手法がさらに極まったものに『モンタイユー』があります。これは異端審問の調査記録から南仏のある村の様子を蘇らせたものです。

 他にもまだまだたくさんあります。歴史に興味をもたれたらとにかく読みまくるしかありません。一冊に書いてあることは一人の著者の見方に過ぎません。とにかく同じ事柄でも多くの本を読んでみて、あなたなりの見方を作ってみてください。
 それと本を買うことを躊躇してはいけません。つんどく(積読)でもいいから手元に集めることで自分が今どういうことに興味を持っているかの指標になります。歴史書籍は部数が少ないのでほしいと思ったら確実に押さえることをおすすめします。


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