世紀末2

千年王国思想っていうのは、キリスト教世界だとユダヤ教からの影響が強いので すが、最悪の現状を打破して神の到来に備えようというのは世界の到るところでみ ることできます。中国史では弥勒下生信仰がそれによく似ていて、北魏以降繰りか えし出てくるテーマで元末の紅巾の乱は弥勒下生信仰が全国的に唱えられた反乱で した。

キリスト教世界の千年王国思想が、現在の人間の支配している歴史の後に、キリ ストが再臨して世界を千年支配したあと最後の審判が起きて終末を迎えるという歴 史の終わりを説くのに対して、中国の弥勒下生信仰の場合には、未来での弥勒仏に よる理想世界の到来を説いても仏教の輪廻思想に基づいて終末を強調することはあ りませんでした。ただし、現在から未来への移り変わりで、現在の終末に天変地異 や多くの災難が人々に降りかかることを説きましたからその点では共通点がありま す。

さて、キリスト教世界の千年王国思想の母体となったのはユダヤ教ですので、そ れを簡単にみたいとおもいます。ユダヤ教は多くの教典を残した宗教で、千年王国 思想で重要になるのは「ダニエル書」です。この教典は過去のダニエルという預言 者が未来について夢をみるという形式をとりながら、実はユダヤ人の現在の歴史を 書くという出来レースのような預言書なのですが、ここに書かれたユダヤ人の危機 意識がその後に大きく影響しました。

ダニエル書が執筆されたのは前2世紀なかばで、この時代はアレクサンドロス大 王の後継者であるギリシア人であるセレウコス朝の王たちがオリエントを支配して いました。彼らギリシア王たちは各地にゼウスを主神とする宗教を押しつけており、 この時代の王アンティオコス4世は特に宗教政策に重きをおいていました。バビロ ン捕囚からの帰還以降、ある程度の自治を保ってきたユダヤ教徒はこれに強く抵抗 したため前167年、王はユダヤ教の徹底弾圧に乗り出します。こうした宗教危機 のなかで信仰を守るものには最後に救いがくるという内容のダニエル書が登場した のでした。

こうした救いをもたらすものとして救世主の存在が現われ、その後も数多くの預 言書が書かれました。そうした歴史を背負ってキリストは登場してきます。


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