10.王朝国家体制

 王朝国家体制とは10〜12世紀の国家を中世的支配体制を準備・促進する過渡的 国家と考え、その独自の支配体制を示す概念です。  国衙領での租税収取・土地支配、在地領主制展開に関する戸田芳実氏の諸研究 を坂本賞三氏が国家の支配政策として再構築・体系化したものが現在の王朝国家 体制論の基礎を成しています。  王臣家と富豪層の結合による国家支配動揺の克服を目指した9世紀末〜10世紀 初頭の国政改革は、籍帳による個別人身支配・班田収受の最終的放棄、中央集権 的統制緩和=受領の任国支配における裁量権拡大(受領請負)など、律令国家の人 民・土地支配原理の根幹を修正するものであり、これ以後の国家(とその支配体制) を王朝国家(体制)と呼びます。  王朝国家体制論の研究史的意義は、それ以前の平安時代史研究が封建的諸関係 形成の直接の担い手(領主制論・非領主制論)とそれが成長してくる荘園・公領の 内部に関心が集中したのに対して、石母田正氏が示唆していた国家(中央政権)独 自の機能の存在とその能動性を明確にした事、及びそのことによって個別的に解 明されてきた諸事象を一連の政策的意図(支配の維持・再編)の下に統一的に把握 するという視角を提示したことにあると云えるでしょう。  王朝国家体制=支配構造と、いわゆる摂関政治・院政=政治形態との関連もま だまだ始まったばかりです。それらの解明は王朝国家体制論の視角と方法を検証 し、当該期国家についての国家論的検討と認識を錬磨する事で果たされるでしょ う。

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