源平盛衰記
(げんぺいじょうすいき…網羅主義が物語る意志とは?)



「げんぺいせいすいき」と読まれる方もあります。全四十八巻で、イロハ四十七文字に対応した巻名がつけられております。関連説話がしつこいほど多く、冗長であるとよく言われますが、私個人としてはいろいろなことを知ることができるので、そうとはあまり感じません。恐らく、この一本を編集した人も、詳しく知りたいという需要があったからこそ、このように編集したのでしょう。


この本の特徴として、観音(特に長谷観音)と法華経の利益を説いた説話が多く挿入されていることが挙げられます。その最たるものは四十七巻で、他の諸本が、平家嫡流の六代が、助命に奔走した文覚が亡くなって殺されるところで本編が終わるのに対し、この本は、文覚の助命と、その後に長谷観音の利益を説いて本編が終わります。

この文覚ですが、『源平盛衰記』だけには彼の生い立ちが描かれます。そこには文学が観音の申し子として描かれるのですが、その観音の申し子が六代の助命を成功させ、その死を描かずに先の観音の霊験譚で終わることを考えると、盛衰記の観音信仰という枠組みが見えてくるのではないでしょうか。

『太平記』にこの『源平盛衰記』を参照したと見られる部分があり、南北朝ごろの成立とみられたりもしますが、現存するものが江戸期のものしかないことと、享受記録が慶長年間になって初めて見えることから、実はもっと遅い江戸の成立との説もあります。


また、江戸時代を通じて、記事が多い『源平盛衰記』と平家物語との前後関係がたびたび説かれました。平家物語を増補して『源平盛衰記』が作られたのか、逆に『源平盛衰記』を縮めて平家物語が作られたのかです。しかし、『源平盛衰記』に「異説に曰く」とか「異本に曰く」という表現が散見されることから、『源平盛衰記』が記事を増補して作られたというのは間違いなさそうです。
現在、世田谷の静嘉堂文庫や名古屋の蓬左文庫などに写本が残っています。

●入手の仕方

新本では新人物往来社と三弥井書店から出ています。前者は青い本で、さすが大衆慣れした出版社だけあって、装丁が洒落ています。後者は赤い本で、注釈が詳細ですが、未完です。でもどちらもハードカバー5冊なのでかなりかかると思っていいです。安く購入したいのであれば、友朋堂文庫から上下2巻で出ているのが安め。古本屋によっても違いますが、大体五千円くらいです。その外にも古本でいろいろあるので、結構簡単に手に入ります。

●『参考源平盛衰記』について

『源平盛衰記』を平家諸本中もっとも正確な一本として、覚一本を初めとして、南都本や鎌倉本、長門本といった平家諸本及び、『吾妻鏡』『玉葉』『山槐記』といった日記や歴史書と比較し、注釈を付けた書です。水戸藩の徳川光圀の命により、今川弘済と、彼の死後継いだ内藤貞顕が編纂、元禄3年に完成しました。

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