練習の答え



如何でしたでしょう。初学の方は、ルビが無い漢字がいくつか出てきて、お困りになったかもしれませんが、下の翻字とあわせて確認してみてください。
それでは練習の翻字を下に示してみましょう。変体仮名については初見のものを解説して行きます。前の「かなを知ろう」の所を見ながら、確認してゆくとよいと思います。
なお、ここに出てきた漢字のうち、「取」「少」「置」「其」「然」「両」「五」「本」「正」「直」「心」「是」「此」「無」は、よく出る漢字のくずしで、必修漢字といってもよいでしょう。

【一枚目】
今(いま)ハむかし、或(ある)いやしき婆々(ばゝ)途(と)中にて、何(なに)か入し財布(さいふ)を拾(ひろ)ひ
・「今ハむかし」…「は」がカタカナと同じ「ハ」になる事はよくあることです。
・「いやしき婆々(ばゝ)」…「き」は「起」。「婆」のルビにある「は」は「者」。
・「途中にて」…「に」は「爾」。
・「何か入し」…「か」は「可」。

【二枚目】
(右の俳句)
てをかけり 折らて 過ゆく 木槿かな 松風
・「木槿かな」…「な」は「南」をくずしたもの。
・「松風」…本名、簗田邦美。俳諧作者・漢詩人。寛文12年(1672)〜宝暦7(1757)。儒学者として仕えるも長続きしなかったが、明石藩に仕えてからは国元に落ち着いた。其角の門人。松風は初号である。(参考『俳文学大辞典』)

(左の詞書)
老婆(らうば)が正直(せいちよく)人(ひと)を感(かん)ぜしむ

【三枚目】
取(とり)あげて其儘(まゝ)そこに捨置(すておき)行(ゆき)けるを少(すこ)し跡(あと)より行(ゆく)男(おとこ)
・「取りあげて」…「あ」は「阿」。「げ」は「希」。
・「行けるを」…「け」は「介」。 ・「少し後より」…「少し」のルビの「す」は「春」。

これハ相應(さうをう)の人柄(から)にて小者一人召連(めしつれ)来りしが頓(やが)て此所(このところ)
・「これハ」…「こ」は「古」、「れ」は「連」。

へ来てミれバ財布(さいふ)なり。不審(いぶかし)ながら取上(とりあげ)ミれバ金(かね)の入たる
・「不審ながら」…「な」は「奈」。
・「金の入たる」…「金」のルビ「かね」の「ね」は「年」。「入たる」の「た」は「多」。

様子(やうす)。ゆへ開(ひら)き改(あらた)むれバ、金子五両あり。先(さき)の婆々(ばゝ)ハひろい
・「ひろい」…「ひ」は「飛」。

ながら何(なに)ゆへ其儘(そのまま)捨置(すてをき)しや。合点(がてん)ゆかねバ小者(こもの)に云(いひ)つけ
彼(かの)婆々(ばゝ)に追着(をひつき)問(とふ)べしと急(いそ)がせける。其身(そのみ)も續(つゝ゛ゐ)てゆき、其(その)
所以(ゆへん・しワさ)をとへバ、婆々(ばゝ)の曰(いはく)、我身(わがミ)ハ極(きハ)めて貧(まづ)しく日々(ひゝ゛)人(ひと)に雇(やと)

・「我身ハ」…「我」のルビ「わ」は「王」。
われて露(つゆ)の命をつなぎ侍(ばべ)る者なり。然(しか)るに今(いま)途(と))中にて
・「つなぎ侍る」…「つ」は「徒」。

小財布(こざいふ)を見附(つけ)とり上ミれバ、必(かな)らず金(かね)のいりたるやうに覚(おほ)へ
・「必らず」…「ず」は「須」。

【四枚目】
侍(はべ)りしゆへ我身(わがミ)せめて一両日(いちりょうにち)の食物(しよくもつ)あらバ落(おと)せし人(ひと)を尋(たづ)ねて
・「一両日」…「両」のルビ「り」は「里」。

戻(もど)し參(まい)らすべきに今日(けふ)の日を空(むな)しくすれバ忽(たちま)ち食物(しょくもつ)に離(はな)
るゝが哀(かな)しさに、本意(ほんい)にハあらねど其儘(そのまま)差置(さしをき)ぬと語(かたり)けれバ

・「本意」…「本」のルビの「ほ」は「本」。

此男(このおとこ)愕然(がくぜん・をどろき)として扨々(さて/\)正直無欲(しやうじきむよく)の老婆(らうば)かな。若(もし)其方(そなた)に逢(あハ)ず
して彼(かの)財布(さいふ)を見當(みあた)らハ自然(しぜん)ひろい取(と)る心(こころ)になりもやすべき
あら恥(はづ)かしや、と赤面してぞ語(かた)られける。是等(これら)が全(まつた)く徳(とく)不孤(こならず)

・「是等」…カタカナの「ホ」見たいなこの字は「等」の異体字としてよくでてきます。

かならず隣(となり)ありて此男(このをとこ)も無欲陰徳(むよくいんとく)の志(こころざし)に成(なり)しハ有(あり)がたき事(こと)
ならずや。



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